4月16日(土)・17日(日)にシステマ東京の主催により、
システマ創始者のミカエル・リャブコ師と
その子息のダニール・リャブコ師の来日セミナーが行なわれた。
自分はもちろん、このセミナーに連日参加した。
会場の荒川総合スポーツセンターは、
システマのセミナー会場として頻繁に利用されている。
自分にとっては、何十回も来たことがある慣れ親しんだ会場ではあるが、
ミカエル師のセミナーが行なわれるのはおそらく初めてではないだろうか?
だから、システマ界最高の達人のセミナーに参加するという高揚感もあり、
なじみのある会場のアットホーム感もあり、少々不思議な気分だった。
今年は、ミカエル師が初めて大阪でセミナーを実施することになり、
その流れで東京でもセミナーを開催を・・ということになったらしい。
ミカエル師はここ数年、毎年のように来日しているし、
今回は大阪でもセミナーを実施したこともあり、
セミナー1日目は昨年にくらべて参加人数がやや少ないように感じられた。
ところが、セミナー2日目は参加人数が非常に多く、
荒川総合スポーツセンターの武道場がパンパンに埋まる盛況だった。
ざっと数えて、150人以上は集まった様子。さすがの集客力!!
システマ創始者・ミカエル師のブランドとカリスマ性は素晴らしいなと改めて思った。
数年前から、いわゆるインターナルワークがシステマ界の大きな潮流になってきているが、
近頃のモスクワ本部のインターナルワークは、
身体の「中」だけでなく、より精神的な「中」へのアプローチを重視しているように思う。
今年2月のザイコフスキー来日セミナーの際の言葉が印象に残っている。
身体を戦車にたとえると、その操縦士としてのサイキにアプローチするべき、
とザイコフスキーは言っていた。
これは平たくいえば、動きの源となる意識や魂に働きかける、ということだと自分は理解している。
今回のミカエル師の東京セミナーでも、
全体を通して、精神面のコントロールが大きなテーマとして一貫していた。
セミナーの流れをざっと振り返ると、
1日目の午前中はミカエル師のリードで、
恐怖を体に入れずにコントロールするという内容だった。
非常時でも恐怖に囚われず、その感情から抜け出せれば、
パニックを起こすことなく正しい判断ができ、適切な動きができる。
恐怖や怒り、痛みなどの感情のコントロールは、
インターナルワークの1つの大きなテーマだということだった。
具体的なメニューとしては、
3人組を作り、1人から与えられた痛みを呼吸で抑え、
痛みの反応として湧き上がる怒りや緊張をもう1人の体に移す・・などのワークを行った。
また、ペアを組み、相手から体をスラップ(平手打ち)された際に湧き上がる怒りや痛みを、
何度か拍手することで打ち消す、というワークも行った。これはなかなか面白かった。
ミカエル師によれば、人が拍手する時、賞賛や興奮というポジティブな感情を
自分の中に入れすぎないように行う、という面もあるらしい。
この拍手の効果は、怒りなどのネガティブな感情を抑える上でも役立つとのことだった。
これには目からウロコが落ちる思いだった。
今回、ミカエル師から教わった感情のコントロール法は、
戦いなどの非常時だけでなく、仕事や家庭などの普段の生活の中でも
大いに活用できる点が素晴らしいと感じた。
続いて、セミナー1日目の午後はダニール師のリードで、
ナイフの捌きをフリーワーク気味にみっちりと練習した。
対ナイフという緊張しがちな状況で、
午前中に学んだ感情のコントロールを実践的に試すことができて良かった。
インターナルワークというと繊細で難解な印象があるが、
今回のセミナーは全体的に高度な内容でありながら、
分かりやすい教え方で、初心者でも充実した練習ができたのではないかと思う。
翌日、セミナー2日目のテーマは「長い武器」ということで、
最初から最後までひたすらスティック(杖)を使ったワークを行った。
ここまでスティック尽くしのセミナーも珍しいから、新鮮だった。
ミカエル師がまず、スティックの後ろに身を隠す、
スティックで相手の注意を引きつける・・・などの基本の動きを実演して見せてくれた。
そして、その基本を応用する形で、相手の接近を制したり、崩したり、
アンコンタクト(非接触)でのコントロールにまで発展していった。
ミカエル師が自分の体の一部のようにスティックを自在に操る様子は、
見ていて惚れ惚れしてしまった。
スティックを持たせた相手を崩して、身動きが取れないように固めてしまう・・という
神技のようなデモも見せてくれた。
また、普通の人なら両手で扱っても重い金属製の槍を
ミカエル師は片手で軽々と操作しているのも驚異的だった。
その重い槍で、デモ相手の手や足にピンポイントで正確に刺していたから、
ミカエル師の身体操作のレベルはどれだけ高いんだ・・と唸らされた。
ミカエル師に続いて、2日目の午後はダニール師が
スティックワークを様々な形で発展していった。
ダニール師のデモもやはり素晴らしい達人技だったが、
ミカエル師の神技のような動きに比べて、
一般の練習生にも分かりやすく見せようという配慮を感じた。
偉大すぎるミカエル師に比べて、
ダニール師は年が若い分、動きの面でも、キャラクター的にも、
一般の練習生にとっては親しみやすいのではないかと思う。
ミカエル師とダニール師のリードはそれぞれ違った味わいがあって面白かった。
今回、ミカエル師やダニール師から教わったスティックワークは、
システマ大阪の大西インストラクターが言うように、
スティックで表現するインターナルワークだといえる。
(まあ、当然といえば当然だが。)
長くて重みのある武器(スティック)を使う分、
自分や相手の緊張や重心や動きの方向性が分かりやすく、
インターナルワークの精度を上げるのに非常に効果的だと感じる。
普段から長い武器を使っていると、
徒手の動きも大きくレベルアップするだろうから、
今後の日々の練習にももっと取り入れていきたいと思う。
セミナー全体の感想としては、
ミカエル師、ダニール師のデモの時間が非常に長く 、
達人技を目の前でじっくりと体感できたのがとても良かった。
DVDやYouTubeの動画を見るのも参考になるが、
マスターの動きや佇まいを同じ場で体感することがやはり大事だと思う。
今回のミカエル師東京セミナーに参加して、
細かい技術的な部分や、インターナルがどうこうというのはさておき、
今の自分に足りなかったエネルギーがチャージされた充実感がある。
長くシステマを続けていると、ついついマンネリ気味になることもよくあるが、
ミカエル師やダニール師に会うたびに、
やっぱりシステマって凄い! 素晴らしい!! とシステマへの情熱がますます湧いてくる。
お陰様で、インストラクター資格も無事に更新できたから、
今後も地道に練習を続けて自分のシステマを高めていこうと思う。
最後に、ミカエル師、ダニール師はもちろん、
素晴らしいセミナーを開催していただいたシステマ東京の皆さんに心より感謝致します。