最近の自分は、システマ南埼玉のクラスの
練習風景の動画を撮るのがマイブームになっている。

基本的に、自分の動きを後でチェックするために撮影しているのだが、
他の参加者の動きを見て、いろいろと感じることも多い。

近頃はシステマ南埼玉にも熱心な参加者が増えてきて、
みんな結構、上達してきているな・・とは思う。

ただ、クラスの中で何となくモヤっと、参加者の動きに違和感を感じることもよくある。

厳しいことを言えば、

「こんなやり方で練習していたら、そこそこ上手く強くはなれても、
じきに伸び悩んだり、変な方向に行ってしまうんじゃないの?」

・・・という違和感がある。 

端的に言えば、システマが追求する理想から
かなり離れた方向に行ってしまうんじゃないか・・・という懸念を持っている。

練習中に気になった点はその都度、本人に指摘はしているが、
システマ南埼玉で撮影した練習風景の動画を後で見直すようになって、
システマ練習生に一般的に見られる欠点というか、
悪い傾向が明確になってきた。

そこで、せっかくブログという手段を持っていることだし、
この機会に自分が気づいた点を書いてみたいと思う。
 

① もっとスローに、精密に

北米のシニア・インストラクターに、マーティン・ウィラーという人がいる。

マーティン師は、長年にわたり様々な武術・格闘技を学んだ後にシステマを修得し、
短期間でヴラディミア師からシニア・インストラクターに認定された。
全世界のシステマ界の中でも有数の実力者である。

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マーティン師の動きは華麗で素晴らしすぎます!

 

 

 

 

 

 

彼の滑らかでキレキレな動きは素晴らしく、
デモも派手でスカッとコンバティブな感じ。
さらに、実戦経験も豊富ないかにも武闘派という印象で、
凡人とは明らかに違う境地にある達人だといえる。 

※【参考】 マーティン師の華麗なるデモ
https://www.youtube.com/watch?v=WhxyLQN-t9E
https://www.youtube.com/watch?v=LUWuIWySnGs


そのマーティン師が昔、来日してセミナーを実施した際、
システマが上達するための秘訣について質問された時の答えが興味深かった。

   ”More slowly, more breathing.”
     (もっとゆっくり、もっと呼吸して)

天才的に動きがキレキレのマーティン師から、
「もっとゆっくりやりなさい」という発言が出るのも意外だったが、
これはシステマ上達のための本質を突いた発言だと感じて、
自分はとても気に入っている。

システマの練習はやはり、スローワークが基本だと思う。
いきなり速くやろうとすると、力んだり、雑な、間違った動きや感覚を
脳に定着させてしまうことが多い。

その一方で、ゆっくりと繊細に、
自分の心身の状態や相手の動きを感じながら
ワークをすれば、確実に良い動きができる。

しかし、システマ南埼玉の練習風景の動画を見ると、
良い動きや感覚が見についていない内から
速くやろうする人が多いのが気になる。

例えば、プッシュやストライクの際は、
拳から、腰や肩を回さずに打つのが基本だが、
ついつい、腰・肩が回ってしまう人が目立つ。

また、ストライクやナイフを捌く際は、体から動いて回避するのが基本。
補助的に手を使うとしても、相手の腕に圧はかけず、
ソフトに手を添えるだけにすることが望ましい。

しかし、横着して体がその場にとどまって居着いてしまい、
腕で強引にガツッと相手の腕を押しのけてしまう人が多い。

システマ的に正しくリラックスした動きは、
初心者にはなかなか難しいかもしれないが、
通常の5倍も10倍も遅く、それこそ腕や体にハエが止まるような速度でやれば、
大半の人がそれなりに出来るのではないかと思う。

自分の印象では、システマ歴が長い人、システマが上手い人ほど、ゆっくり丁寧にワークする。
逆に、システマ歴が浅い人、システマが下手な人ほど、速く雑にやろうとする傾向がある。

だから、システマ南埼玉の参加者の皆さんにも、
意識的に、ゆ~~~っくりと、精密にワークする習慣をつけていただきたい。
(ゆっくりでできないことが、速い動きでできるはずがないわけだから。)

練習のパートナーにも、勇気をもって、
「もっとゆっくり動いて」と伝えた方がいい。

そして、ゆっくりと正確にできるようになったら、
精度が落ちない範囲で、徐々に速度を上げていくといいと思う。
 

② スパーリングの弊害

他のシステマ団体のことはよく知らないが、
システマ南埼玉はおそらく、スパーリングを頻繁に行なう部類のグループだと思う。

それは何より、主宰者である自分がスパーリング好きだからだし、
スパーを全くやらないよりは、少しでもやった方がいいと考えている。

しかし、スパーを雑な形でやると、弊害も大きい。

自分はその辺りをかなり注意しているし、
クラスでも参加者に常に言ってきたつもりだが、
自分の意図が十分に伝わりきれていないように思う。

システマジャパンの創立者、スコット・マックィーン師は以前、
「スパーリングをやっても固くなるだけだから、やらない方がいい」と言っていた。 

最近のシステマ南埼玉のスパー動画を見ると、
そういったスパーの弊害がかなり出ているように感じている。

いくつか例を挙げると、 

 ・相手と力がぶつかりっ放しでも、そのまま勢いでスパーを進行してしまう

 ・遠い間合いから、素早いが相手に見え見えのストライクを打つ

 ・攻撃や防御の際、やみくもに腕をブンブン振り回す

 ・テイクダウンしたい時は、とりあえずタックルを仕掛ける

・・・などの動きがスパーの中で散見される。

ここで挙げた例が絶対に駄目だとは言わないし、
時にはそういう動きが有効な場合もあるが、
「システマらしい良い動き」ではないのは確か。

そういう動きは、スパーの中で限定的に効果的なことはあるかもしれないが、
決して、システマの上達につながる動きではないと思う。

他の格闘技では良いとされる動きでも、
システマの観点では悪い動きとなる場合も多い。
初心者の方はまず、「システマらしい良い動き」というものを
概念的にも理解しておいた方がよいかもしれない。

そこで、自分が考える「システマの観点での良い動き/悪い動き」をベースとした
「システマの観点での良いスパーリング/悪いスパーリング」を以下に定義してみた。
少しでも、練習生の皆さんの参考にしていただければ嬉しく思う。
 

【悪い動き/悪いスパーリング】

× 四大原則から離れている

× 頭で考えて動く

× 筋肉の力を中心に使う

× 相手の力とぶつかる

× 相手とコネクトしていない

× 勝敗にこだわる

× エゴが出る

× ステイト(心身の状態)が乱れる

× 心拍数が速くなる

× エクスターナルな要素が多い

× 自分の得意な動きや、特定の勝ちパターンしか出ない

 ・・・など

 

【良い動き/良いスパーリング

◎ 四大原則を守っている

◎ 体で感じて動く

◎ 重みや動きの力を中心に使う

◎ 相手の力を受け流し利用する

◎ 相手とコネクトしている

◎ 勝敗にこだわらず、スパーを通じて何を学べたかを重視する

◎ エゴが出ない

◎ ステイト(心身の状態)が穏やか(calm)で乱れない

◎平常時の心拍数とほぼ変わらない

◎ インターナルな要素が多い

◎ 自分でも考えていなかった新しい動きがどんどん出てくる

 ・・・など

 

自分はシステマ南埼玉のクラスでスパーリングを行う時、
スパーという緊張する状況の中で、
いかにシステマらしい良い動きができるか、という意識でやっている。

上に挙げたマーティン・ウィラー師や、
ミカエル師、ヴラディミア師のような素晴らしい動きを、
自由攻防の中で体現できるようになるためにスパーをやりたいと考えている。

しかし、そのような意識があっても、
ついつい緊張したり、相手に勝ちたいというエゴが出てしまうことも多い。

自分なりのシステマ観、システマ感覚が確立されていない人は、
スパーでは特に「悪い動き」の方に傾きがちだから、細心の注意が必要だと思う。

例えば、DVD や YouTube でマスターやシニア・インストラクターの
自由で滑らかな動きを見て、システマ感覚を養うことをお勧めしたい。

また、システマ南埼玉の練習風景を動画に撮って、
Facebookのページによく載せているから、
自分の動きを改めて見て、マスターやシニア・インストラクターの動きと
見比べてみてもよいのではないかと思う。

ただ、システマ初心者の方がどんなに気をつけたとしても、
スパーリングで良い動きをすることは難しい。 

だから、システマ南埼玉の今後のスパーリングの運営方法も
いろいろと工夫していこうと考えている。

具体的には、

■ 中国拳法の推手のような、スローで繊細な感覚の自由攻防 

■ ある程度、攻め役・受け役を決めた形の自由攻防

・・・などの割合を増やしていこうと思う。

また、「スパーリング」というとついつい、
しのぎを削る勝負とか、互いに優位性を競い合う感覚になりやすいから、
今後はなるべく「フリーワーク」(自由攻防)という言葉を使おうと思う。

勝敗にはこだわらず、四大原則を守りながら、
攻防の中でどれだけ自由に動けるか、を確認する試みだと位置付けたい。

 

・・以上、長々と偉そうに書いてきたが、
自分も今までにシステマ修行の中でさんざん
間違った方向に行ってドツボにはまり、遠回りしてきた。 

その反省から、じっくりと丁寧にスローワークで練習し、
勝敗にこだわらないフリーワークを行うことこそ、
システマ上達のための早道だと実感している。

システマ南埼玉の参加者の皆さんもぜひ、
スローワーク感覚、フリーワーク感覚を
日々の練習に取り入れていただきたいと思う。